米CIA、トランプ政権下で反中宣伝工作の専門チームを結成

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Trump authorized covert CIA operation in 2019 to spread negative stories on Chinese social media including that Communist Party officials were storing ill-gotten gains overseas
 Daily Mail, March 14, 2024

➡米国の元政府高官がロイター通信の取材で語ったところによると、2019年、ドナルド・トランプ(Donald Trump)前大統領は中国共産党の信用を失墜させるためのストーリーを中国のソーシャルメディアに拡散し、世論を敵に回す宣伝工作を米中央情報局(CIA)に指示したという。
➡この宣伝工作を進めるにあたって、CIAでは専門チームを立ち上げ、偽のオンラインIDを使って習近平政権の評判を下げる情報を流布した。これによって、発展途上国におけるインフラ整備に資金を提供する中国の「一帯一路」構想が浪費的で腐敗しているという疑惑を高めることにつながったとしている。
➡また、その宣伝工作の一環として、中国では国際送金に関して厳しく規制されているにもかかわらず、中国共産党幹部が海外に銀行口座を開設し、そこに不審な資金を保管しているという話も流布していた模様である。
➡取材に応じた元政府高官は、宣伝工作をどのように進めたのかについて詳細を明らかにしなかったが、流布したストーリーは事実にもとづいたものであると述べた。
➡宣伝工作の目的は、中国共産党指導部の猜疑心を高めることにあったようだが、別の目的として、規制の厳しい中国のインターネット空間において、異論がどのように拡散するのかを調べるためのデータを集めることもあったようである。米国の元政府高官の一人は、「幽霊を追いかけさせたかった」と語っている。
➡さらに、こうした宣伝工作は、中国だけがターゲットではなく、「一帯一路」構想に関係する東南アジアやアフリカ、南太平洋といった地域の国々の世論もターゲットになっていたという。
➡今回、暴露された宣伝工作は、当時、大統領副補佐官(国家安全保障担当)を務めていたマット・ポッティンジャー(Matt Pottinger)がゴーサインを出したとのことである。
➡中国外交部の報道官は、今回の暴露に関して米当局が「世論空間とメディア・プラットフォームを武器として偽情報を広め、国際世論を捜査している」ことを明らかにしたとコメントした。

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Austria expels 2 diplomats from Russia's Embassy in Vienna. An official says it's related to spying
 Daily Mail, March 13, 2024


➡オーストリア当局は13日、ウィーンにあるロシア大使館に勤務する外交官2人について、スパイ活動に関与しているとの疑いから「ペルソナ・ノン・グラータ(personae non gratae)」に該当するとして国外退去を命じたと発表した。容疑の詳細は明らかにされていない。
➡今回の措置を受けて、ロシア外務省は「オーストリア政府が根拠もなく決定したことについて、ロシアは適切な対応をとる」とし、「二国間関係をこれ以上、悪化させるのであれば、それはすべてオーストリア政府にある」とコメントしている。
➡西欧諸国とロシアは、2022年2月に始まったロシアのウクライナ侵攻以来、何度もたがいの外交官を追放してきた。永世中立国として知られているオーストリアは、その中立的スタンスから外交官追放に消極的だったが、2022年4月には4人のロシア外交官を追放し、2023年2月も4人のロシア外交官を追放した。また、ウクライナ侵攻以前にも2020年8月に1人のロシア外交官を追放している。

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What’s in the US Intelligence Community’s 2024 Annual Threat Assessment?
 by Catherine Putz
 The Diplomat, March 12, 2024


➡米国家情報長官室(ODNI)が11日、発表した「年次脅威評価(Annual Threat Assessment)」によると、米国は現在、「大国間の戦略的競争が加速し、国境を越えた課題が一層厳しく予測困難になり、いくつかの地域紛争が広範囲に影響を及ぼすことによって、ますます脆弱化する世界秩序に直面している」という。
➡この報告書は、2006年以来(2020年を除く)、国家安全保障上のリスクを広く知ってもらうために内容の一部が公表されており、米国に対して今後、もっとも直接的で深刻な脅威になるものに焦点が当てられている。
➡脅威となる国家としては中国、ロシア、イラン、北朝鮮が挙げられており、必ずしも優劣をつけているわけではないが、中国への言及がもっとも多く、しかも広範囲にわたっている。実際、地域的なレベルから世界的なレベルまで、また、経済・技術的懸念、軍事・大量破壊兵器問題、サイバー問題、スパイ活動、「悪質な影響力工作」など、あらゆることに触れられているのは注目に値する。
➡また、地域紛争によって生じる脆弱性に関しても脅威として取り上げられており、「世界各国における国家間の紛争や国内の混乱についても、米国だけでなく同盟国や協力国に対する脅威として国家安全保障上、課題となっている」とした上で、地域紛争が近隣諸国にとどまらず、ときには世界にも連鎖的な影響を及ぼすと指摘している。
➡懸念されている国家間の紛争としては、南シナ海や東シナ海における中国の行動、インド・中国の国境紛争、アゼルバイジャンとアルメニアの緊張、インド・パキスタンの対立などが挙げられている。とくにインドとパキスタンに関しては、「今のところ、脆弱だが平穏な状況を維持する傾向がある……だがそれは、いずれも国内問題に集中したいからであって、この平穏な時期を二国間関係の再構築に利用しているわけではない」と評価している。
➡一方、国境を越えた脅威に関しては、「国家による脅威とともに複雑なシステムで相互に作用しており、しばしばたがいを強化し、米国の国家安全保障に複合的かつ連鎖的なリスクを生み出している」との見方を示している。また、こうした脅威を競合領域(破壊的技術、デジタル権威主義と国境を越えた抑圧、大量破壊兵器)、共有領域(環境変化と異常気象、保健の安全保障、移民)、非国家主体問題(国際組織犯罪、人身売買、グローバル・テロリズム、民間軍事・安全保障企業)という3つのカテゴリーに分類している。
➡全体的なテーマとしては、個々の脅威を単独として見るのではなく、地域紛争にしても感染症のような無定形なものにしても、ある分野が他の分野に与える影響について重視しているようである。これに加えて中国やロシアといった悪意ある国家が、少なくとも米国の視点からは世界の人びとに影響を与えようとしているとみなしている。
➡今回の報告書では、中国やロシアが悪用しようとしている対象として米国内の社会的分裂が挙げられており、それ自体がリスクだという見方も示されている。こうした国々は、米国内の社会的分裂を積極的に利用し、それを偽情報キャンペーンによって増幅し、認識できないほど歪曲するかもしれず、対立の激化が懸念される。ただ、情報機関の管轄外だからだろうか、国内紛争の可能性がある国として、米国は挙げられていない。

[関連資料]
Annual Threat Assessment of the U.S. Intelligence Community
 Office of the Director of National Intelligence, February 5, 2024

ODNI Releases 2024 Annual Threat Assessment of the U.S. Intelligence Community
 Office ot the Director of National Intelligence, March 11, 2024

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Honeypot: The Art of Seduction in Espionage
 by Edwin Taylor
 Grey Dynamics, March 12, 2024

➡ハニートラップ(honey trap)、もしくはハニーポット(honey pot)とも呼ばれるスパイ活動は、恋愛や性的関係を利用した方法で情報源にアクセスし、情報を入手するものである。この方法を用いたスパイ活動のことをセックスピオナージ(sexpionage)と呼ぶこともあるが、要するに性行為に及ぶことによって情報源へのアクセスを得て、情報を手に入れるという点では同じである。
➡この手の方法では、価値があると思われる情報を持つターゲットを特定し、その人物に近づく。罠をかける者は、ターゲットと偽りの関係を結ぶ。この関係を利用して、機密情報にアクセスするのである。肉体関係を伴うこともあるが、現代ではサイバー・ハニートラップが増えている。
➡そもそもハニートラップには、長い歴史的背景がある。たとえば、旧約聖書をひもとくと、古代イスラエルの士師であるサムソンの妻、デリラは、サムソンの敵対勢力によって買収され、サムソンを裏切ったことについて描かれている。だが、ハニートラップが組織的に実践されるようになったのは、20世紀に入ってからである。
➡もちろん、現代でもその手法が廃れたことはない。したがって、どの国でも情報漏洩を防ぐため、ハニートラップ対策が講じられている。たとえば、イギリスでは2008年、金融機関をはじめとした民間企業に対して、中国のサイバー・ハニートラップの脅威について警告するとともに、それがビジネスに与える脅威についても言及し、その背後に中国政府が関与していると具体的に名指しした。また、2016年に開かれた杭州G20サミットでは、イギリス政府職員に対して中国のハニートラップの標的になるおそれがあるとして警告を発した。
➡中国も2024年1月、国家安全部が「WeChat」の公式ページで、外国のスパイに警戒するよう国民に呼びかけた。
➡一方、サイバー・ハニートラップでは、従来のスパイ活動に比べて工作員を失うリスクが少ない。なぜなら直接、ターゲットに接触し、誘惑しなくてもいいからである。たとえば、イランは各種SNS上で「ミア・アッシュ(Mia Ash)」として知られる偽のオンライン・プロフィールを作成し、そこに寄ってきた男性をイランのために働くように誘惑する工作活動を行なってきた。こうしたことは近年、AI技術の向上によって偽の顔写真や動画を作ることができるようになったので、以前よりも一層、引っかけやすくなった。また、SNSではさまざまな人たちとつながることができるので、そこから公開されているプロフィールや投稿内容などをチェックし、ターゲットを特定することも容易になった。さらにSNSは、世界中どこからでもアクセスすることが可能であり、そのセキュリティーもけっして強固とは言えない。
➡もしハニートラップに引っかかってしまったら、どうなるか。国によってさまざまだが、政府職員や軍事機密を扱う技術者などは長期間の禁固刑や解雇につながることが多い。政治家であれば、その地位や影響力を失うことになるだろう。国際法的に言えば、ハニートラップは違法ではないが、事案が発覚すると外交関係に緊張が走ることは避けられない。
➡ハニートラップは、歴史的に用いられてきたスパイ活動の方法であり、その目的は人とのつながりを利用して機密情報にアクセスすることである。ソ連や東ドイツのように、国家が後ろ盾となって行なっているわけではないが、世界の国々によって長らく使われてきた方法であることは間違いない。そして、その犠牲者が止むこともないのである。

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