カテゴリ:
The politics and economics behind Biden’s China-car espionage probe
 The Strait News, March 2, 2024

➡米国のジョー・バイデン(Joe Biden)大統領は、米国人をスパイするために使用されるおそれがあるとして懸念が広がっている中国の電気自動車について、その可能性があるかどうか調査する方針であることを明らかにした。
➡中国の電気自動車産業は近年、他国を圧倒して急成長を遂げており、多くの場合、米国企業よりもずっと安い価格で世界中に輸出することを目指している。こうした状況は、米国に自動車メーカーにとって脅威となっており、中国の電気自動車と競争しなければならなくなることに警戒感を強めている。
➡バイデン大統領は現在、再選を目指して選挙運動を展開しており、「我々は自動車産業の未来が、米国の労働者たちによって米国で作られるようにするつもりだ」と述べ、支持を拡げるために自動車産業で働く労働者にアピールしている。
➡専門家の間では、中国のスパイ活動に関する脅威を認めつつも、バイデン大統領が中国に厳しい姿勢を示すのは、弱腰なところを見せないためだと受け止められている。米シンクタンクの戦略国際問題センター(Center for Strategic and International Studies)、スコット・ケネディ(Scott Kennedy)上級顧問は、調査自体は妥当なものとしているが、「今回の発表は、課題への解決策を見つけると同時に、中国に対して弱いという非難を和らげることも狙っているようだ」と述べている。
➡また、スコット氏は、こうした調査によって「国家安全保障に対する過剰な懸念」にもとづく保護主義に拍車をかける可能性も懸念している。その結果、世界のサプライチェーンが破壊され、米国の生産に打撃を与えるおそれがあると警告した。
➡多くの自動車産業関係者は、中国に対して高い貿易障壁を設けるように求めており、米国とヨーロッパ諸国はそれを検討している。テスラ社のイーロン・マスク(Elon Musk)氏は、そうしなければ、中国は世界の競合企業を「壊滅」させるだろうと述べた。
➡バイデン政権は、米国の道路を現在、走っている中国製の自動車がスパイ行為に関与している証拠はないと発表した。だが、中国は米国を監視するために、ハッキング技術を繰り返し利用してきた歴史がある。
➡中国への制限的な貿易政策は、分断が深刻化している米国において、党派を超えて一致する珍しい分野である。バイデン大統領は、トランプ前政権から続く中国との貿易戦争を実質的に継続している。

カテゴリ:
FBI To Study Possible Spy Balloon Discovered By Alaska Fishermen: REPORT
 The Daily Caller, March 1, 2024

➡CNNが伝えたところによると、漁師たちがアラスカ沖で中国のスパイ気球と疑われる物体を見つけ、それを米連邦捜査局(FBI)に届けた模様である。FBIは、その物体をヴァージニア州クワンティコにある研究施設に移し、そこで調査を行なう予定となっている。
➡見つかった物体について、漁師たちは気球ですらないかもしれないと言っているようである。だが、写真を見ると、警察当局者の間で十分な懸念を呼び起こし、FBIは調査のため、その物体を引き取ることになった。
➡米国ではちょうど一年前、中国のスパイ気球がアラスカからアメリカ大陸を横断し、ワシントンで大騒ぎになった。最終的には2023年2月4日、米国の戦闘機が出動し、サウスカロライナ沖の上空で気球を撃墜した。
➡スパイ気球は、以前から機密性の高い軍事施設の上空を通過していた。バイデン政権関係者は、中国のスパイ気球が持つ能力から軍事施設を保護するための措置を講じ、米国の国家安全保障を危険にさらすことはないと述べた。また、そのスパイ気球が米国を含む他国の情報収集を目的とした、より広範な空中監視作戦の一部だったことを明らかにしている。

カテゴリ:
Myanmar and the second-oldest profession
 by Andrew Selth(Adjunct Professor, Griffith Asia Institute)
 New Mandala, March 1, 2024

➡インテリジェンスは世界で二番目に古い職業だと言われる。それが真実かどうかは分からないが、おそらくアジアでは、インド、もしくは中国がその活動をもっとも古くから実践してきた国だと思われる。
➡たとえば、紀元前1400年頃に書かれたとされる『リグ・ヴェーダ(Rg Veda)』には、ヴァルナ神に代わって人類を監視するスパサ(spasa)の記述がある。また、紀元前2世紀に書かれたと言われる『実利論』では、諜報機関の設立が推奨され、秘密工作が奨励されている。どちらも内外の敵に対して用いられ、住民の忠誠心を確認するためのものだった。『孫子』は伝統的に、東周時代(前771年~前256年)に活躍したと見られる孫武の著作と考えられている。中国初期のスパイ活動やスパイ術に関する記述は、現在ではこのジャンルの古典となっている。
➡ミャンマーの歴史家は、これらの著作と一致する書物を挙げることはできないが、早い時期からスパイが組織的に利用されていたことは史的できる。
➡古いミャンマーの記録は、直接的、または間接的に、ある種のスパイ活動や秘密工作に言及している。たとえば、ビルマ王室の命令書には、「軍隊の耳」として活動する人物が王国に欠かせないと記載されている。また、1885年のマンダレー陥落後、イギリス軍が王宮から押収した公文書のなかには、「秘密工作員の資格」と題されたものがある。そこには、スパイを「パラ(para)」と呼び、スパイに必要な資質として、秘密にしておきたい他人の活動を察知する能力、自分の秘密工作を隠す能力、たとえ他の国王から贈り物を受け取っても揺るがない忠誠心が挙げられていた。
➡さらに、その公文書では「ヤタラハヴァンナとして知られる特殊なタイプの秘密工作員」についても触れられている。この工作員は、「商人や僧侶に扮してスパイ活動を行なう」ことで区別されていた。言い換えれば、変装や他の種類の裏技を使った秘密情報収集を専門とする幹部の一員だった。
➡たとえば、1569年、タウングー朝のバインナウン(Bayinnaung)はビルマ支配に対する反乱の後、シャムの首都アユタヤを奪還するためにスパイを使った。米国の歴史家、ヴィクター・リーバーマン(Victor Lieberman)によると、17世紀中、ビルマの首都アバは「スパイの巣窟」だったという。1765年、再度、シャムに侵攻する前、アラウンパヤー王(Alaungpaya)はスパイ団を送り込み、アユタヤを偵察させた。ボダウパヤ王(Bodawpaya)とバギドー王(Bagyidaw)は、イスラム学者をスパイとしてインドに派遣したと言われている。1784年、ボダウパヤ王がアラカン王国を征服したのは、ベンガルへの使節団の後、ヌーが提供した情報によるものであったとも言われている。
➡イギリスが1824年、ビルあを三分割併合を始める前、コンバウン朝は国内情勢を把握し、政敵から身を守るために、スパイや情報提供者の大規模なシステムを採用していた。ある歴史家によると、コンバウン朝は「強力で洗練された内部スパイシステム」を構築していたという。ビルマの多くの集落では、「王室の聞き手」、または「王室の耳」として任命された役人がいて、国王や上級廷臣に情報提供を行なうことが務めだった。イギリス特使のジョン・クロフォード(John Crawfurd)は、こうした役人を「公認のスパイ」と呼んだ。
➡1758年、コンバウン朝の創始者、アラウンパヤー(Alaungpaya)は、地方裁判所やその他の権力中枢にいるスパイを監督するための特別な役人を置いた。だが、ミンドン王(Mindon)は、その役人たちが信用できないとし、あらためて「偉大なる帰還者」として知られる1000人の元僧侶を雇ったと伝えられている。
➡こうした役人に加えて、国王は国中を行き来できるスパイや情報提供者を雇った。彼らはメッセージを運び、現地の情勢を報告した。国王はまた、広報官を置き、情報の収集、伝達を行なわせた。一般農民と国軍、労働者団体との間の社会的区分は、相互監視を促進するのに役立った。スパイのなかには特殊な任務を負った者もいた。たとえば、1824年、イギリスがビルマ征服を始めた後、ビルマ人スパイはしばしばイギリス軍のキャンプやその周辺で、作戦計画、部隊の戦力や動向などに関する情報を収集しようとしていた。さらにビルマの近隣諸国に関する情報を収集するために国外に赴き、ヨーロッパ諸国に関する情報を集めた。
➡こうした情報収集、照合、分析のすべての形態は、孫子によって「神の糸操り」と形容されたプロセスである。19世紀の間、この仕組みはイギリスによって一貫して過小評価されていたが、その理由の大部分は、征服しようとしていた国に関するイギリス自身のインテリジェンスの欠如にあった。
➡言うまでもなく、スパイが存在したからといって正確でバランスのとれた報告が保証されるわけではない。実際、イギリスが奪ったビルマ側の文書のなかには、自分勝手な報告や誤解を招くような報告もあった。報告はしばしば、複雑でよくわからない、急速に変化する情勢を解釈するスパイの能力に依存していた。また、報復を恐れて、スパイは王が聞きたいことではなく、実際に起こっていることを伝えるように指示された。
➡ビルマ国王のもとでの監視とスパイの記録を振り返ると、イギリスの植民地政権も市民警察を基盤とした強力な情報システムを確立していたことも興味深い。1948年、ビルマが独立回復した後、ネ・ウィン(Ne Win)将軍は中央情報機関の創設を望んだ。その構想は実現しなかったが、1962年、ウー・ヌ(U Nu)の民主政権を打倒した後、実現に至った。軍部の情報機関とその後継組織は、警察の特殊部門を含む国の情報機関を支配した。
➡1988年、民主化蜂起が頓挫した後、当時の国防総省情報局(DDSI)は事実上、「見えない政府」になった。DDSIは2004年に解体されたが、DDSIの後継機関は再び、軍人たちの強力なツールになり、今の軍事政権を支え、市民を抑圧できるようになった。以上のような歴史を見ると、ミャンマーはつねにインテリジェンス国家だったのである。

カテゴリ:
Obama’s CIA Asked Foreign Intel Agencies To Spy on Trump Campaign
 by Robert Chernin(Chairman, American Center for Education and Knowledge)
 Real Clear Politics, February 28, 2024

➡先日、米メディアが伝えたところによると、米国の情報コミュニティー(intelligence community)が2016年の大統領選挙前にドナルド・トランプ(Donald Trump)の関係者を監視するため、「ファイブ・アイズ(Five Eyes)」の構成国に協力を求めたことが明らかになった。このことは、ディープ・ステイト(Deep State)が自国の利益を守り、敵対勢力に挑むため、どこまでやるかを思い知らされる出来事である。また、同時に外国の情報機関が大統領候補者に対して動員されたとする米国政治史上の暗黒部分を暴露するものでもある。
➡今回、報じられた出来事は、情報活動を政治的に武器化した顕著な事例である。外国の同盟国が国家安全保障を口実にして、米国市民を監視することは、民主主義のプロセスと米国の情報活動における自律性に重大な疑問を投げかける。
➡トランプ陣営への捜査は、自慢げなトランプ側近に関するオーストラリアからのタレコミによって始まったと言われている。何年も前から推し進められてきたことであり、今やトランプを弱体化させるため、広範で組織的な取り組みの隠れ蓑になっているようである。もし報道が正しければ、イギリスの情報機関が米国の情報機関に代わってトランプを標的にするようになったのは、公式発表の主張よりずっと前にあたる2015年のことである。
➡この意味は深い。米国の大統領選挙の結果に影響を及ぼすため、米国と他国の情報機関同士が前例のないレベルで結託していたことを示唆している。米国の法律や監視の制限を回避するため、外国の情報機関を利用することは、米国の主権と民主主義の原則に対する重大な脅威である。
➡さらに、トランプ陣営への捜査は米中央情報局(CIA)のジョン・ブレナン(John Brennan)長官を含む、オバマ政権高官の命令によって開始されたと言われている。これが事実だとすれば、事態は深刻である。ブレナンがファイブ・アイズの監視対象としてトランプの関係者を特定し、彼らに「接触」するように指示したことは、トランプ陣営を疑惑と陰謀の網に絡めとろうとする意図的な戦略だったことを示している。
➡トランプがロシアと共謀しているという説を作り上げることに外国の情報機関が関与していたという報道は、その後の捜査を委縮させるだけでなく、国内の政治的利益のために国際的な連携を利用しようとする米政府内の特定の人びとの意思を浮き彫りにしている。今回の暴露は、そのような権力の乱用が明るみになり、繰り返されないように厳しく罰せられることを確実にするため、徹底的で透明性のある調査を要求する。
➡詳細が明らかになるにつれ、米国民はこの出来事を指揮し、実行した者たちに説明責任を求めることが不可欠である。選挙プロセスの神聖さと情報機関への信頼が危機に瀕しているのである。情報機関の政治化を野放しにしてはならないし、民主主義のプロセスに外国勢力が関与することも容認できない。

カテゴリ:
Australian spy chief says foreign regime recruited ex-lawmaker
 The Strait Times, February 28, 2024

➡豪保安情報機構(ASIO)は28日、年次脅威評価を発表し、外国から干渉される脅威が過去最高レベルに達していると警告した。年次脅威評価は毎年、発表されており、国内テロからサイバー戦争まで、オーストラリアを脅かす安全保障上の脆弱性に関して分析したものである。
➡報告発表にともない、ASIOのマイク・バージェス(Mike Burgess)長官は、その脅威の危険性を強調するため、今まで機密扱いとしてきた事例を明らかにした。その事例とは、ある国がオーストラリアの元議員に働きかけ、寝返らせることに成功し、その元議員が外国のスパイに協力して偽の海外会議を開催し、オーストラリアの主要な学者や政府要人を招いたというものである。
➡出席者が会場に到着すると、正体不明のその国は、知名度の高い出席者を勧誘し、機密情報を聞き出そうとした。
➡バージェス長官は、具体的な名前を出すことは控えたが、「この元議員は、外国の利益のために、国や党、元同僚を売り渡したのだ」と語った。また、豪首相の家族をスパイ仲間に引き込もうとしたとしている。
➡また、同長官は、オーストラリアへの外国からの干渉はここ数年でもっとも高いレベルにあるとし、「脅威は現実である。脅威は今まさに現実に存在している」と述べた。
➡その他の事例として、オーストラリアを標的にすることを任務とした外国の情報チームやオーストラリアの重要インフラに潜在的な弱点がないか調べている国があったとしている。
➡テロの脅威に関して、バージェス長官は、イスラエルとハマス(HAMAS)の紛争による地域社会の緊張に懸念を示している。だが、紛争後、オーストラリア人がハマスに協力するために中東に行ったという話は、今のところないという。
➡とはいえ、ASIOとしては、監視の目をかいくぐって、個人や小規模のグループが簡単に入手できる武器を使ってテロを起こす可能性を否定していない。

[関連資料]
Director-General's Annual Threat Assessment 2024
 ASIO, February 28, 2024

このページのトップヘ

見出し画像
×