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Russia’s election-manipulation efforts aim undermine Ukraine aid, NSA says
 Defense One, March 18, 2024

➡米国家安全保障局(NSA)のロブ・ジョイス(Rob Joyce)長官は、15日に行なわれた記者団の取材に対して、少なくとも2016年以来、米国の選挙を揺さぶるために活動してきたロシアは、今年はウクライナに対する米国の政治的支援を弱体化させることに焦点を当ててくるだろうと語った。
➡リトアニアのシンクタンク、「デバンク・オルグ(Debunk.org)」が行なった分析によると、ロシアは自国の国益を追求するために、年間15億ドル以上を世論工作に投じている。その資金は、ロシア・トゥデイ(Russia Today)のようなメディアを通じてプロパガンダを流したり、ソーシャルメディアで偽のアカウントを立ち上げたりするために使われている。
➡だが、X(旧ツイッター)は2022年、イーロン・マスク(Elon Musk)氏によって買収されてからロシアや中国による情報操作からサービスを守るための安全装置が大幅に少なくなっていると、元従業員らが警告を発している。実際、ある分析によると、先日、ロシアの反体制活動家、アレクセイ・ナワリヌイ(Alexei Navalny)氏が死亡した件に関するジョー・バイデン(Joe Biden)米大統領のツイートに関連するやりとりの約30%が偽物だったという。
➡だがロシアは、2016年の米大統領選挙で民主党全国委員会の電子メールをハッキングし、それを共和党候補者だったドナルド・トランプ(Donald Trump)前大統領に有利になるように使用するなど、特定のシナリオを強化するために情報を利用することがある。今月初め、ドイツはロシアがウクライナを支援する西側諸国の連携を乱すために通信傍受の情報を使ったと発表した。
➡ジョイス長官は、チャットGPTのような一般向けの新しいAIツールが出てきたことによって、ロシアが偽情報活動の規模を拡大することができるようになると見ている。「悪意ある影響を与えようとするアクターの多くは、英語を母国語としていないが、彼らが発信するメッセージには、文法的な誤りを見いだすことができないものがある。今、今や……生成AIの存在がそうした誤りを直してくれるからである。その点である一人の人間が、もっともらしく信憑性のあるように見える資料を大規模に作成できるのである」という。
➡最近、AIがバイデン大統領になりすまし、予備選での投票を思いとどまらせる詐欺電話(robocall)をかけるという事案が見つかった。ジョイス長官は、こうした仕掛けが今後も増えるだろうと指摘している。

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Exclusive: Musk's SpaceX is building spy satellite network for US intelligence agency, sources say
 Reuters, March 17, 2024


➡ロイター通信が複数の情報筋に取材したところによると、宇宙事業を手掛ける米企業、スペースX(SpaceX)社は、米国の情報機関と契約を結び、何百もの偵察衛星のネットワークを構築しているという。
➡このネットワークは、偵察衛星を管理する国家偵察局(NRO)との間で、2021年に締結された18億ドルの契約にもとづくものであり、スペースX社のスターシールド事業部門(Starshield business unit)によって構築されている模様である。
➡取材に応じた情報筋は、この計画はSpaceX社の米情報・軍事プロジェクトへの関与の大きさを示しており、地上部隊の支援を目的とした巨大な地球低軌道衛星システムに対して、国防総省が積極的に投資していると述べている。今後、計画が発展すれば、米国は地球上のほとんどあらゆる場所で潜在的なターゲットを素早く発見する能力を大幅に向上させるものと考えられている。
➡また、スペースX社とNROの契約は、バイデン政権と衝突し、ウクライナ戦争でのスターリンクへの接続をめぐって論争を巻き起こしたイーロン・マスク(Elon Musk)氏の会社がNROから信頼されていることを示すものとも言える。
➡構築するネットワークは、数百の偵察衛星が低軌道で群れをなして活動し、地上のターゲットを追跡しつつ、そのデータを米情報当局や軍当局と共有することができる。原理的には、米政府は地球上のほぼすべての場所で地上の活動を継続的かつ迅速に画像化し、情報活動や軍事活動を支援することができるようになる。
➡NROは、高度な衛星システムを開発する使命があること、ならびに他の政府機関、企業、研究機関との協力関係について認めたが、この計画にSpaceX社がどの程度、関与しているのかは明らかにしなかった。

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CIA covert campaign against China shows 'necessity of counter-espionage efforts'
 Global Times, March 15, 2024


➡中国外交部の汪文斌(Wang Wenbin )報道官は、15日に開いた定例記者会見において、米中央情報局(CIA)がトランプ政権下で中国への宣伝工作を仕掛けようとしていたというロイター通信の報道について、米国が中国に対して継続的な偽情報キャンペーンと認知戦を展開しているという証拠を示したものだと述べた。
➡CIAのウィリアム・バーンズ(William Burns)長官は、『フォーリン・アフェアーズ』誌(2024年1・2月号)に寄稿した論説のなかで、CIAは「世界中で中国関連の情報収集、作戦、分析に向けたリソースを大幅に投入している。……ラテンアメリカからアフリカ、インド太平洋に至るまで、中国に対抗するために世界中で取り組みを強化している」と書いている。
➡汪報道官は、共和党のランド・ポール(Rand Paul)上院議員が以前、米政府は世界史上「もっとも偉大な偽情報の伝播者」であると述べたことを引き合いに出しつつ、米国はしばしば他国が偽情報を流していると非難するが、実際には米国自身が偽情報の真の発信源であると付け加えた。
➡また、汪報道官は、偽情報の作成と流布は、自分自身の評判を一層、下げることになるとし、それによって中国の発展を止めることはできないし、米国にさらなる恥をかかせるだけだと強調した。

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Key Takeaways from the Annual Threat Assessment of the U.S. Intelligence Community
 by Christopher S. Chivvis(Senior Fellow, Carnegie Endowment)
 Just Security, March 15, 2024


➡米国家情報長官室(ODNI)が今月、発表した「年次脅威評価(Annual Threat Assessment)」は、米国が国家安全保障上の脅威について、どのように見ているのかを知る数少ない機会である。この報告書を作成するにあたって、米国の情報コミュニティーでは何カ月にもわたって、何を含めるべきか、それぞれの脅威についてどれだけのスペースを割くべきかについて議論し、重要な判断の言い回しや表現をめぐって論争し、一般公開に向けて全体を注意深く精査する。
➡今年の報告書(公開版)では、中国、ロシア、イランに関して興味深い内容が含まれており、2024年11月に実施される米大統領選挙への干渉の危険性についても明確に警告している。また、先端技術やサイバー能力、核兵器など、多くの領域で米国とその同盟国を危険にさらしている中国への言及が多いことも当然だろう。
➡だが、情報コミュニティーの評価としては、中国は戦争を望んでいるわけではなく、中国にとって利益をもたらし、核心的利益を守ることになると考えるなら、米国との緊張緩和を求めるだろうと見ていることは、興味を引くところである。
➡米国内の議論では、多くの政府高官が中国、ロシア、イラン、北朝鮮といった国々の協力が深化することによって脅威が高まっているとの懸念を示している。だが、報告書では、ロシアが中国、イラン、北朝鮮からの支援を得ていることを確認しつつも、こうした国々の結びつきを過大評価しないことが重要だと指摘している。たとえば、「少なくともこの10年間、中国とロシアは両国の防衛協力の強さを示すために、注目度の高い合同軍事演習を行なってきたが、相互運用性の強化はわずかなものにとどまっている」と分析されている。つまり、NATOのようにはなっていないということである。
➡ただ、今年の報告書で出された重要な警告のひとつは、米大統領選挙への介入に関する脅威である。米国の情報コミュニティーが以前から指摘してきたロシアだけでなく、中国やイランなども選挙への影響を画策し、米国内に分裂の種を蒔こうとするかもしれない。その脅威について警告を出しつつ、民主主義体制に対する米国人の信頼を損なうことがないようにしなければならない。そのラインを引くことはけっして簡単ではないが、報告書のなかで選挙介入の脅威を明確に強調したことは、重要な意味を持っている。
➡ロシアに関しては、安心材料と懸念材料がある。安心材料としては、少なくとも報告書では、ロシアが米国やNATOとの直接的な軍事衝突を望んでいないと見ていることである。欧州の政治指導者のなかには、ロシアが今後、数年のうちにNATOを攻撃すると主張する者もいるようだが、その可能性は「ほぼ確実に」ないと評価している。
➡だが一方で、報告書には懸念材料として、ロシアのウラジーミル・プーチン(Vladimir Putin)大統領がウクライナで核兵器を使用するという脅しを否定する人たちへの警告も含まれている。つまり、ロシアの勝利が達成できない状況だと、ウクライナがロシアへの攻撃を続けることとも相まって、核兵器使用の可能性を高めるかもしれないというのである。そうなると、NATOはエスカレーション・リスクについて考えなければならなくなる。
➡イランに関しては、イランの指導者たちはハマス(HAMAS)のイスラエル攻撃を画策したわけでも予見していたわけでもないという見方が示されている。これは、イランとハマスが広くつながりがあると考えられているだけに、注目に値する評価だと言えるだろう。もちろん、イランがハマスやヒズボラ、フーシなどのグループと無関係だと言っているわけではないが、少なくとも昨年10月のイスラエル攻撃に関しては、背後にイランがいたという証拠は乏しいということなのだろう。
➡報告書の序文において、外国の侵略やエスカレーションを抑止しようとする米国の行動が、敵対国から脅威として認識され、自国を打ち負かそうとしているのではないか、自国の政権を転覆させようとしているのではないかという猜疑心を生んでいることにも触れられている。この点に関しては、米国が防衛強化に乗り出すべきではないと主張したいわけではなく、米国はその世界的なパワーの行使にあたって自制し、慎重に行動する戦略的利益と道義的責任の両方を負っていることを思い起こさせようとするものである。

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Should governments ban TikTok? Can they?
 by Doug Jacobson(Professor, Iowa State University)
 Defense One, March 14, 2024


➡米下院は13日、動画投稿サイト「TikTok」の親会社で中国に拠点を置くバイトダンス(ByteDance)社に対して、TikTokの国内利用を事実上、禁止する法案を可決した。ジョー・バイデン(Joe Biden)大統領は、同法案がホワイトハウスに回ってきたときには署名すると述べているが、上院で同法案が可決されるかどうかは、まだ不透明である。
➡米政府はすでに、州政府や外国政府、一部の民間企業とともに、データ保護の観点から業務用の携帯電話でのTikTok使用を禁止している。
➡だが、アプリの全面的な使用禁止は、単にデータ保護とは別の問題を抱えることになる。たとえば、TikTokはどのようなプライバシーリスクをもたらすのか。TikTokが推奨するコンテンツのアルゴリズムは危険なのか。政府がTikTokを全面的な使用禁止とするのは合法的なのか。そもそもTikTokを禁止することは可能なのか。こうした疑問が浮上するからである。
➡アプリがデータを収集する理由のひとつは、そのデータによってユーザーのためにアプリを改善することに使われるからである。だが、ほとんどのアプリは、企業が運営資金を調達するためにデータを収集しているのが実情である。この収益は通常、収集したデータにもとづいてユーザーを広告のターゲットにすることによって得られる。こうしたデータの使用について、次のような疑問が湧いてくる。すなわち、アプリはこうしたデータを必要とするのか。データを使って何をするのか。そして、そのデータを他者からどのように保護しているのか。
➡TikTokは、ポケモン・ゴーやフェイスブックなどと何が違うのだろうか。TikTokのプライバシーポリシーを読む人はほとんどいないと思われるが、それによると、収集するデータとしては、アカウント作成時に提供する情報(名前、年齢、ユーザー名、パスワード、言語、電子メール、電話番号、ソーシャルメディアのアカウント情報、プロフィール画像)以外に、いくつか気になる項目がある。それは、位置情報、クリップボードのデータ、連絡先情報、ウェブサイトのトラッキング、さらにアプリをつうじて投稿したデータや送信したメッセージなどが含まれているのである。
➡とはいえ、多くのアプリはTikTokと同様、ユーザーのデータを幅広く収集している。そうであるなら、なぜTikTokだけ不安視されるのだろうか。それは第一に、中国政府がTikTokをつうじて、約1億5000万人の米国人ユーザーのデータにアクセスすることが懸念されるからである。
➡もしデータが中国政府の手に渡った場合、問題はそのデータがどのように活用されるかである。潜在的な脅威としては、中国政府がデータを使って、貴重な情報にアクセスできる人びとをスパイすることである。米司法省は、バイトダンス社が米国のジャーナリストを監視するためにアプリを使用していたとして捜査を行なっている。中国政府は、米国の政府機関や民間企業をハッキングしてきた歴史があり、その多くはソーシャル・エンジニアリングによって促進されてきた。
➡第二に、アルゴリズムの偏向やアルゴリズム操作が挙げられる。TikTokやその他のソーシャルメディア・アプリは、ユーザーの関心を学習し、ユーザーがアプリを使い続けるようにコンテンツを調整しようとするアルゴリズムが組み込まれている。TikTokはアルゴリズムを公開していないので、アプリがどのようにユーザーのコンテンツを選択しているのか不明である。
➡また、アルゴリズムによって特定の物事を信じるようにユーザーを誘導している可能性もある。TikTokのアルゴリズムが偏向しており、若いユーザーの間で否定的な考えを広め、世論に影響を与えているのではないかと疑惑は数多く存在する。アルゴリズムの操作が意図的ではない可能性もあるが、中国政府が人びとに影響を与えるためにアルゴリズムを使用している、あるいは使用する可能性があるという懸念は消えない。
➡もし連邦政府がTikTokを禁止すべきだという結論に至った場合、約1億5000万人いるとされる米国人ユーザー全員にその使用を禁止することができるのだろうか。その措置は、まずアップルやグーグルのアプリストアを通じて、アプリの背信をブロックすることから始まるだろう。だが、アプリを使おうと思っている人びとには、別の方法でアプリをダウンロードし、インストールすることができる。
➡抜本的な方法としては、アップルやグーグルにTikTokが実行できないように携帯電話を変更させることが考えられるが、それはおそらく憲法修正第1条(表現の自由)とのかねあいから法的な課題に直面し、失敗するだろう。要するに、絶対的な禁止を実施するのは難しいということである。
➡また、仮に禁止が可能だとしても、どれほどの効果があるのかよく分からない。ある推測によれば、中国政府はすでに米国人の80%の個人情報をさまざまな手段で収集していると言われている。そうだとすれば、TikTok禁止を実施しても、今後の被害はある程度、抑えられるとはいえ、中国政府はすでに相当量のデータを持っていることになる。
➡では、一般ユーザーとして何を心配すべきなのだろうか。繰り返しになるが、バイトダンス社がどのようなデータを収集し、それが個人にどのような害を及ぼすのかは不明である。ただ、ユーザーが見る動画を決定するアルゴリズムが若年層にどのような影響を与えうるかについては、禁止とは関係なく、精神衛生上の観点からしっかり議論すべきだろう。

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